【看護の日 そして】
いつもボランティア活動に伺っている病院の年に一度のイベント「看護の日」にハンドマッサージで参加させていただき、みなさんがとても喜んでくださり楽しかったです。
そしてこの看護の日にもう一つ嬉しいことがあったんです。
数年間、(この方はがんではない)リフレをさせて頂いていた患者さんがいるのですが、その方がリクライニングチェアーに乗せられ、看護師さんとハンドマッサージブースに来てくれました。
そしてその方が言うのです。
「酒井さん、今日会えてよかったわ。私、今週退院するのよ家に帰るの」
その言葉を聞いて無意識に、目から涙が吹き出してしまいしばらく喋ることができなくなりました。
この方に拒否をされた日もありました。
一緒にテレビを見ながら、タレントさんの悪口を言って笑いあいました。
テレビで高校野球を見ながら、一緒に応援をして騒いだときも、死にたいと言葉をもらされたときも、
いろんな日々の毎月数時間を一緒に過ごしました。
この方が、家に帰れる。
神様はいたんだ!と思いました。
後で在宅コーディネートをされたSWと話しをしたら、SWは在宅と言っても問題だらけで一概に喜べた状態ではないと話していましたが、
それでも私は、あの方が たとえ少しの間だろうとも、不自由な在宅生活だったとしても、自分の家でご飯を食べたり寝たり風を感じることができるのは、あの方の数年もの願いだったので、嬉しいのです。
そして、たとえ在宅が途中でダメになろうとも、それはあの方の運命です。
でも今は一度でも自分の家に帰れることだけを素直に喜び噛み締めたいのです。
私は常に、在宅が全てではないと言い続けていますが、でも本人が一度でも家に帰りたいと願うなら、たとえ数日でも帰らせてあげたい。
でも、現実はずっとの在宅看護は無理な場合もあるということを踏まえての話しです。
まだまだ在宅看護が簡単ではない現代において、
変更があることを覚悟する必要があると思います。
問題は、在宅での生活ではなく、「一度でも家に帰った事実を感謝と希望にできるか」です。
多くは、「家に帰らせてあげたい」「在宅看護をしないのは冷たいと思われそう」と感じている人がいますか、そうではありません。
「一度でも、数時間でも家に帰ることができたら、まるもおけ。その時間を感謝と希望にして変化を受け入れることが大事」です。
あの方は自宅に帰ったら、切られていないうどんを食べたいそうです。
がん家族セラピスト
酒井たえこ