?こんな質問をされました。
軽度知的障がいのある人が胃がんで全摘して、術後1カ月なにも食べず点滴をしています。
どうしたら食べさせられますか?
私からの質問
1、担当医はどのような見解なのか?
2、患者さんの性格は?
3、あなたはどのように接しているのか?
私がお答えしたのは次の内容です。
周りの人はいつも食べなさいと言っていませんか?
「食べないと治らないよ」
「お医者さんも食べなさいって言ってるよ」
「なんで食べないの」
では立場を変えましょう。
貴方が食欲のない時に同じことを言われたら食べれますか?
考えてみてください
「いつ食べさせたいのか」
患者さんは点滴は受けてくれているので、急を要しませんよね。
徐々に食べていけるようになりたいという状況です。
ならば、食べなさいという単純な言葉では目的に近づきません。
反対に食べることを嫌いになってしまいます。
さてここからが、答えになるのですが、みなさんか欲しい答えではありません。
この質問をしてくる方の多くはこんな答えを期待しています。
「◯◯を食べさせるといいですよ」
「◯◯を使うと食べますよ」
このような答えです。
そこで私からの答えですが、
1、医師に相談し見守り期間があるのならば、食べないでもよいと覚悟する。
2、患者が水分や何かを口にする時、褒める!
3、患者の体調リズムを観察し、体調の良い日に食べものチャレンジする。
この3つです。
食べないということを、少しずつ
成功体験として脳にアプローチする
この脳にアプローチすることは、とても有効です。
食べたくないけど、楽しそうだから「食べてみよう」に変えるのです。
食べる意欲を「動物的本能」としてアプローチします。
意欲は、感情と同じで
性格やホルモンに大きく作用されています。
だから、体調の良い時に褒めることは有効。
今回の患者さんを例にすると
キャラメルは食べるので、
キャラメルを食べた日は褒める。
「キャラメル食べたのすごいねー!美味しいよねー」
「キャラメル食べたからかな、顔色が良いね」
など。
つぎは、キャラメルに似た飴をチャレンジしてみます。
患者が口にした似ている物を変えて
小さなチャレンジをゆっくり重ねていきます。
もちろんその都度褒めます。
体調が悪い日はチャレンジをやめます。
このことを繰り返し行います。
ねらいは 「食べられる」という成功体験を脳に覚えさせる。
次に 体調リズムを観察ですが
自宅療養ならば、患者をさすってあげたり、少し外へ出して朝日を浴びるなどして、体のリズムを作ります。
セロトニンやノルアドレナリンなどよく耳にするホルモンですよね。
このような多くのホルモン作用を円滑にするために体内リズムを作ります。
脳とホルモンからのアプローチは、性格を反映させたアプローチより、患者が受け入れやすいように思います。
と、以上の説明をしたら質問をしてきたおばさんは、ドン引きしていました。笑
欲しい答えじゃなかったんでしょうね。
でも、私は目的が大事だと思うんです。
11 目的は患者が食べた安心感をおばさんが得ること
ではなく、
患者が無理なく(自発的に)食べるようになることなのです。
ならば、決して「食べなきゃ治らないよ」という言葉ではなく、
「性格」「脳」「感情に作用するホルモン」からの、多方面からのアプローチが目的を達成できます。
最後に、このアプローチは
いわゆる患者に寄り添うのではなく、
人の本能や脳の働きにアプローチしています。
だから、このようなアドバイスを聞いてもピンとこない方も多いでしょうが
看病のコツは「常識にとらわれない」ことも大切な心構えだと思っています。
試してみることが、幸せな看病の一歩になることもありますよ。